キオクノカケラ

この日から私の“働く”が始まった。


まずは洗濯。

叔母さん夫婦と夏希さんと輝くん、桜ちゃん。

それと私の６人分を、毎日洗って、干しての繰り返し。


次に食事の用意と後片付け。

６人分作るのはそこまで大変じゃないけど

子供たちが、あれは嫌だとか、これしか食べないとか我が儘を言うから大変になる。


それに掃除。

綺麗にしても子供がすぐ汚す。

夏希さんも一緒になって汚すから大変。

おまけに微妙に広い家だから、掃除する所も微妙に多い。

これだけじゃない。
買い物に幼稚園の送り迎えなどなど…


ホントに、毎日が家事で終わる。


あまりの身勝手さに嫌になることもあった。

けど逆らえば手が出る。

殴られたり蹴られたり…

主に叔母さん夫婦が……


夏希さんは直接手は出さないけど、見て笑ってる。




……でも、これだけならまだ良かった。

我慢できた……


けど、我慢できない、私がどうしてもやりたくない仕事。









……《子供狩り》……


叔母さんの家族は“闇オークション”というものに手を出しているらしい。

そこでは、普通のオークションでは売られることのないものが高値で売買される。

例えば、盗品や麻薬…

そして


……人間



特に人間は高値で売れるらしい。

金持ちの人が奴隷として使うのに買ったり、飾り物として買ったり…


人を“もの”として扱っていた。



そこで、売るための人を捕まえてくるのが私の仕事。

まだ小さい子供を家に連れ帰って

…売る


それも私の仕事。



…やりたくなかった。

泣き叫ぶ子供の声

助けを求めて伸ばされる手

恨めしそうに私を見る目


全てが鮮明に頭に残っている。


助けてあげたかった。

けど、もし逃がしたりしたら何をされるか分からない。


前に一度、こっそり飴をあげただけで

子供たちを閉じ込める牢屋に入れられて、鞭で叩かれたから。