キオクノカケラ
「もう、大丈夫だから…。
無理に聞いてごめんな?」


「オレ達はお前を傷つけるようなことは絶対しない。
だから、泣いていいんだぜ?」


「ええ、頭領の言うとおりですよ。安心して下さい。」


優しく包み込むような甘いふたりの声と

壊れ物を扱うように撫でる結城くんの手が

とても安心できて

また涙が溢れてくる。


私は結城くんの服をぎゅっと掴んで、胸元に顔を埋めた。


そして今まで思ってたことをはきだした。


「っ…私…私……っ」

「最、低…だよ…。ホントに…っ…ひっく」



その間もずっと、「うん…うん」って相づちを打ちながら

頭を撫でてくれた。






「…ありがとう。ごめんね、もう大丈夫」


やっと落ち着いて、涙が止まると

結城くんから離れようと胸を軽く押した。


…あれ?


また軽く押す。


……あれ?


離れない……


私が何回押しても、彼は抱き締めた腕を解いてくれない。


「あの、もう大丈夫だから…」


体が動けないので首だけを上に上げて言うと、結城くんと目が合った。


「あっあの…」


「ふふ、もういいのかい?オレとしてはずっとこのままでも構わないけど?」


彼は冗談っぽく言うと、片目を瞑ってみせた。


みるみる内に顔が暑くなってくるのが分かる。


「ふふ…赤くなった。…可愛いね」


ニコッと悪戯っぽく笑うと名残惜しそうに私を離してくれた。

その笑顔にどくんと心臓が跳ねる。


この場合、赤くならない方が凄いと思う!


そう突っ込みをいれて、結城くんと少し距離をとるために章さんの方にに寄った。


すると手を握られて、後ろから囁かれた。


「ふふ、僕に抱き締められたいんですか?嬉しいですね」


更に赤くなって後ろを振り向くと、章さんを突き飛ばした。


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