キオクノカケラ
ガツンッ

と床に固いものが当たる音がした。


前を見ると、片足だけがソファーに乗ってるのが見えた。

恐る恐る下を覗くと、予想通り。

章さんが頭を床につけて、倒れていた。


ちょっと

強く押しすぎちゃったかな…


「章さん…あの、大丈夫…ですか?」


「っ…詩織さん。これが大丈夫に見えますか?」


ニコッと口の両端を上げて微笑む彼は、笑ってはいるけど

目が笑ってない。


「すっ…すみません」


私は慌てて頭を下げる。


「ふふふ…もう少し手加減してもらいたいですね」


笑ってるのに笑ってない。

章さんの笑顔の裏に黒いものが見える…

それにつられて私も笑顔がひきつる。



結城くんのほうを向いて、助けを求める

けど、くすくすと笑って頬杖をつくだけ。


「結城くん~。助けてよ~」


「くすくす、だからこっちに居れば良かったのに」


そうきたか…

も~章さん、怖いってば!!


章さんは黒いオーラを出しながら私に迫ってくる。

私の正面までくると手を伸ばして、私の顎を軽く掴む。

そのままくい、と上に向けさせられて、菫色の瞳と目が合った。


「助けてだなんて…人聞きが悪いこと言わないで下さいよ」


「いえ、あの…その、え、と……」


「ふふ、顔が赤いですよ?どうしましたか?」


どうしましたか?じゃないですよ!!

顔がっ…

顔が近いんです!



サラサラとながれる蜂蜜色の髪に

私を見つめる菫色の瞳。

さらに整った顔立ち。


髪と瞳の色は違うけど、結城くんと似てる…。

あ、髪質も違うか…


章さんはサラサラで、短いところが少しくせ毛って感じだけど

結城くんはホントにくせ毛って感じ

それで猫っ毛なんだ。


性格も何となく似てるし…

ちゃんとふたりの関係聞かなきゃ!!


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