キオクノカケラ
スピーカーから聞こえる声を聞いて、外を見ると

叔母さんの家が目についた。


着いたんだ……。


「ああ分かった。じゃあ、そういうことだから切るぜ」


『待って!結城く…』


結城くんを横目で見れば、強制的に恵との電話を切っていた。

私も話したかったな…。

ちょっと恨めしそうに結城くんを見つめれば、苦笑された。


この顔…さっきもされたな


部屋で、「結城くんは、優しいね」って言った時。


自分から言ったのに胸が苦しくなって、

部屋にいたくなくて

思わず逃げるように出てきちゃった。


どうしてあの時、

結城くんは女の子になら誰でも優しいんだ。って思ったんだろう…

どうして、胸が痛くなったんだろう…


「詩織?緊張してるのかい?」


胸のところで手を握って俯いていると、

私の顔を心配そうに覗き込む結城くんと目が合った。


ホントに、優しいね…。


「ううん!何でもないの!!」


首を勢いよく振って満面の笑みで答えた。


…はずなのに、

さっきよりも心配そうな顔で、抱き締められた。


「オレが…お前を助けるから。
…………必ず」


「だから、そんな不安そうな顔するなよ」


そう言ってぎゅっと抱き締める手のぬくもりが、なんだか暖かくて

すごく安心できて

私もそっと手を回した。


すると彼は驚いたように一瞬腕を緩めたが、また力が籠った。


「結城くん…ありがとう。
私、信じてるから………。
あなたのこと…――」


まだ出会ってから2日しか経ってないのに、

そんなことを言ってしまった。


自分でもなんでこんなこと言ったのか分からないけど、



この人なら大丈夫。



そう思った。

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