キオクノカケラ
「………」


この人を信じていいのかな。

彼が嘘を言っているようには見えない。

それに、私のことを教えてもらえるチャンスかもしれない。



………この人についていってみよう。


私は自分の中で結論をだした。


「わかった、あなたを信じる」


「っ……ああ」


初めて見た、彼の笑顔。

いや、何度も微笑んではいたけど

どこか寂しそうだった。


でも今の笑顔は、ほっとしたような

ホントに喜んでいるってわかるような笑顔。


私も思わず笑顔になる。


なんでだろう…

結城くんが笑うと私も嬉しくなる

結城くんの哀しそうな顔を見ると私の胸が締め付けられる




「詩織、ほら」


「え?」


「手出せよ…人も多くなってきたし、もう暗いからね」


ホントだ、太陽が燃えるように紅い。

家を出たのも結構遅かったし

まあ、当たり前か。



…綺麗な夕日

ああ、夕日が綺麗に見えるってことは

明日は……


「……“明日は晴れだね、夕日が綺麗に出てるから”」


「え?どうして…」


どうして結城くんに、私の思ったことが分かったの?


「お前は、綺麗な夕日を見るといつも言ってたからね」


「………それって……」


ホントに私のことを知っているみたい。

立ち止まった私の手を掴み、ぐいっと引っ張って結城くんはまた歩き始めた。

必然的に私も歩き出す。


「ちょっと、意地悪したくなったかな。悪い」


「…………」

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