キオクノカケラ
さて、そのことを知っているかどうか。


「確かに、相手のことを調べるのは必要だね」


「…けど、その情報が確かなものじゃないと意味がない。
………分かるね?」


オレは挑発的に笑うと、

相手も気づいたようで小馬鹿にしたように笑った。


「ふふ、それは僕の情報が間違っているとでも言いたいのかな」


「さあ?どうだろうね」


間髪を入れずに言うと、

晴輝の眉間に少し皺がよった。

オレは、それに気付かないフリをして挑戦的な視線を送る。

すると、晴輝は何かを考えるように腕を組んだ。


「…………」


「…………」


暫く重たい沈黙が続く。

こんなことをしててもらちが明かない。


「言えないんなら別にいいよ」そう言おうとしたが、

その言葉は晴輝の言葉によって消された。


「僕が知ってるお兄ちゃんのこと、教えてあげてもいいよ」


そうニヤリと笑う晴輝に、オレも負けじと不敵に笑う。


………へえ。


「それは興味深いね」


オレは床にあぐらをかくと、膝に肘を置いて頬杖をついた。

そして口の両端を上げ、先を促す。


「さて、オレの何を知っているんだい?」


晴輝は一呼吸おくと、淡々と喋り始めた。


「兎街結城、17歳。聖嚶学園2年」

「成績は常にトップ。運動もできるし人当たりもよい」

「更に、若くして世界一を誇る水軍の頭領」

「欠点は、女を見れば挨拶変わりに口説く軟派な性格」

「あとは…兎街グループの嫡男で一人っ子……かな」


晴輝は全て言い終えると、

途中でオレに突き出した手を降ろした。


話を聞く分には、

オレのことを、全部知ってるわけじゃないみたいだな。


心中で安堵しながらも、次にどうするか考えを巡らせる。

…ま、ここはその情報をホントだと信じ込ませるのが無難だな。

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