キオクノカケラ
何も言えなくて、少し前を歩く結城くんの横顔を見ていた。

彼はホントに私のことを知っているみたい。


私が、忘れているのかな?


結城くん……


なんとなく

なんとなくだけど、落ち着く名前


「ねえ、結城くん?」


「ん?」


「結城くんは……」

~♪♪


携帯の着うたが聞こえる。

私は携帯を持っていない

だとすれば、


「悪い、電話だ」


「大丈夫、でて?」

ああ、と答えて結城くんは電話にでた。

「オレだ。…ああ…お前か…それなら…あっちの責任だ。オレたちには…は?…ったく…分かった。とりあえず………」



なんか難しそうな話ししてるな…


…て!結城くんって何者?!


見たところ16か17歳…

同い年…くらいだよね



「悪いね、行こうか。」


「あっ、うん」


いつの間に電話が終わったんだろう。

後で聞いてみよう。

あ、でもいきなり


結城くんって何者?!


なんて失礼か


うーん……


「くすくす、どうしたんだい?百面相したりして」


「えっ!私変な顔してた?!」


「いや?ただ、難しい顔をして考えこんでいるなあって」


「そ、そう?」



そんなに難しい顔してたのかな?…私。


「…詩織」


「?」


「不安かい?」


「えっ?」


あまりにも突然な問いに私はマヌケな声をだしてしまった。


「いや…何でもないよ」


何でもないわけがないよ。

だって、そんなに苦しそうな顔してるんだもん。

握られた手にも自然と力がこもる。


「…ちょっと…不安かな」


「………」


「でも、知りたいの。私のこと」


だから私は、あなたについていく。




私のことが、

もうすぐ分かるかな

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