キオクノカケラ
そう判断したオレは、驚いたフリをすることにした。


「よくここまで調べたね。間違ってないよ」


「だろう?」


勝ち誇ったような顔で、胸を張る晴輝に

内心嘲笑いながらも両手を顔の横に上げる。


「ふふ、こんなに調べてどうするつもりかな」


「もちろん、お前の……あ!」


自分の言葉に“しまった”という顔で、両手で口を塞ぐ。


そんな彼に、追い討ちをかけるように問い詰める。


「オレの……何だい?」


「い、いや。何でもない…」


鋭く睨み付けてやれば、明らかに目が泳いでいる。



火が近づいてきているのか、

パチパチという音がだんだん大きくなる中、

再び沈黙が続く。



まあ、言いたいことは大体予想はつく。

大方オレを殺すとか、水軍を滅ぼすとかだろう。



今までだって無かったわけじゃない。


跡取りって理由で、幼い頃から誘拐も、暗殺もされかけたことがある。

決して安全な立場とは言いがたい。


だから、会社を継いだのも

信頼のおける少数の人間しか知らない。




暗殺も水軍を滅ぼされるのも

そんなこと、させる気なんてさらさらないけど。

先手を打っておくか…。


「…先に言っておくけど、オレの命も水軍も、絶対に渡さないからな」


不敵に微笑めば、晴輝は目をみはった。

それに構わず、オレは続ける。


「なあ、お前はオレのことを知っているのに、オレがお前のことをを知らないのは不公平だと思わない?」


「…………」


「いい加減、正体を明かしなよ」


真っ直ぐに睨み付ける、オレの殺気に満ちた瞳と

先程よりも低くなった声に、晴輝の瞳に恐怖が滲む。


「…………っ」


「ほら、言いなよ」


口の両端を上げ、口元だけで笑うと

晴輝はびくっと体を震わせた。


そのまま唇を噛み締め、俯いてしまった。


「あのな……黙ってちゃ分からないんだけど?」


「…………」



いつまでも口を開こうとしない晴輝に、

多少の苛立ちをおぼえながら盛大なため息をつく。


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