キオクノカケラ
………詩織


オレのせいだ…。

あの時、引き留めなきゃ良かった…。


オレのことを恨んでもかまわないから

思いっきり殴ってもいいから


どうか



どうか、
無事でいてくれ……っ

**********************

あれから3ヶ月が経った。

まだ詩織は見つからない。


もしかしたら、もう…

嫌な考えが頭をよぎる。


「…っそんなことない…大丈夫…大丈夫なはずだ」


必死に自分に言い聞かせるが、どうしても嫌な考えが頭を離れない。


「………っ」


首をふってその考えを吹き飛ばす。


コンコン

そんな時、ドアを叩く音がした。


「なんだ?」


「頭領、失礼します」


「ああ、お前か」


頭を下げて部屋に入ってきたのは、幼なじみの章だった。


「どうした?」


「……頭領、無理しないで下さい」


「無理?」


「ここのところ、ろくに寝ていないでしょう?顔色も優れないようですし…」


少しくぐもった、だけどはっきりと章は言った。


確かに最近はろくに寝ていない。

いや、眠れない。


けど、特に疲れているわけでもないし、仕事に支障はない。

オレは大丈夫だよ、と微笑んだが、彼はどこか納得のいかないような顔をして黙ってしまった。


オレも何も言わずに、窓の景色を眺める。
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