キオクノカケラ
「ちょっ…頭領っ?!」


呼び止める章の声を背に、オレは迷わず彼女の元へ走った。


「詩織っ!」


「わっ……」


手をグッと引き寄せて、バランスを崩した詩織を強く抱きしめる。


「3ヶ月も…どこに行ってたんだよ?」


「えっ…ちょっと」

「学校にも来ないし、随分探したぜ?」

なるべく優しい声で耳元に囁く。


やっと見つけた


無事で、よかった…


「あっあの…ちょっと待って」


「………詩織?」


いつもと違う反応の詩織の顔をのぞきこむ。

オレの顔をじっと見つめて、動かない。

不思議に思ったが、今は会えたことに嬉しい気持ちが勝っていて、


顔を近付けると、そっと唇を重ねた。



パンッ!


一瞬何がおきたのか分からなかった。


乾いた音と共に、頬にはしる衝撃。

ジンジンと痛む頬が、オレを現実へと引き戻す。


「なっ何するのっ!」


「は……?」


「こんなことしてきて、あなた一体誰なんですかっ!」


誰…だと?


背筋が凍って、顔がひきつる。


「詩織?お前、何言ってるか解って……」


そこまで言って、オレは首をふった。

冷静になって考えてみる。

記憶が、ないのか…?


せっかく会えたのに

こんなのって…

……ありかよ



「だからどうして、私の名前を知ってるの?」


その言葉は、オレの胸に深く突き刺さった。


オレは今、どんな顔をしているのだろう

きっと、すごく情けない顔をしているのだろう

くそっ……

< 9 / 153 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop