キオクノカケラ
こくりと頷きながら立ち上がって、目の前が一瞬ぼやけたと思ったら。
ぽすっと結城くんの胸へとなだれ込んでしまった。
頭がクラクラする。
周りの景色が回って……。
足に力が入らない。
「詩織?!」
「あ…ごめ…、だいじょうぶ、だから……」
なんとか笑ってみせても、彼の顔は不安の色が強まるばかり。
大丈夫だよ。
それを伝えたくて、彼の頬にそっと手を伸ばす。
「ごめんね。もう、大丈夫だから」
なるべく自然に優しく微笑んだはずなのに、彼はぎゅっと眉間にしわを寄せた。
「そんな、心配そうな顔しないで?大丈夫だから」
ね?と首を傾けると、彼も曖昧に微笑みながら私の体を支えてくれた。
それにお礼を言って、もう一度叔母さんに向き直る。
真っ直ぐにぶつかる視線と視線。
その威圧感に負けそうになるけど、そうもいかない。
私は拳を握りしめてきっぱりと言い放った。
「残念ですけど、あなたに遺産は譲りません」
「なっ…」
「両親の遺産は、私が相続します」
バレない程度に拳を握って、視線を捕らえる。
少しでも視線を反らしたら負けてしまいそう。
でも私は、負けるわけにはいかない。
「あなたなんかに、両親の遺産は渡さない」
「黙って聞いていれば……っ」