キオクノカケラ
「だって、私なんかに2億なんて大金使わせちゃうの悪いし!
そりゃあ、すぐには無理だけど……」
まったく…。
まだ詩織は自分の価値に気付いてないみたいだね。
オレは小さくため息をつくと、詩織の顎をぐいっと持ち上げて自分の顔を近付ける。
「詩織……オレがどうでもいい奴に2億もかけるバカな男に見えるかい?」
「…結城、くん?」
詩織のキョドった顔は、あまりにも可愛くて
つい顔が緩みそうになるのを必死で堪える。
「2億なんてはした金、お前に比べればなんでもないさ」
「は、はした金?」
「あぁ、お前の為ならいくらでも出すぜ?」
いや。
お望みなら何でも叶えてやるさ。
「言ってる意味、分かるよな?」
「え…えっ、えぇっ?!」
全然分からないよ!と口を尖らせる彼女に若干もどかしさを覚える。
前の詩織なら…。
記憶が戻れば…。
そんな考えが頭をよぎる。
気がついた時にはもう、お互いの息遣いが聞こえる程顔が近くなっていて。
「……詩織、お前はオレの――……」
まさにお互いの唇が、触れようとした時だった。
ガァンッ
大きな銃声と共にひびのはいる車窓。
それに加えて車を取り囲むサングラスに黒いスーツの男たち。
全員片手には拳銃。
「ちっ…しつこい野郎共だね」
「頭領、これは……」
真剣な表情で、静かに内ポケットに手をいれる章にオレもそっと頷く。
「あぁ…」
間違いない。
オレも静かに内ポケットから拳銃を取り出すと、銃を手元に構えて外を見る。
「晴輝を利用した奴らだ」