リナリア
一也くん
「一也くん一也っ!お弁当一緒に食べよっ」
お弁当とお味噌汁の入った水筒を入れた巾着袋を持ち、自分の席でパンを食べようとしてる一也くんに話しかけた。
すると、あからさまに嫌そうに顔を歪めパンをぎゅっ、と握った。あぁもったいない、と思う半面、そのあからさまな表情に傷付いた。
「お前は馬鹿なのか?この間言った言葉覚えてんだろ」
「え?うん。俺に話しかけるな、だっけ」
私は思い返しながら一也くんの机に巾着を置いた。一也くんは、溜め息を吐きながら言葉を紡いだ。
「わかってるならもう...」
私は一也くんの言葉を遮り真実を述べた。
「だけど、私は“わかった”とは何も言ってないよ」
そう、私は“なんで”と疑問を素直に言葉にしただけだ。
一也くんは、呆れたように「勝手にしろ」と呟いたのを私は聞き逃さなかった。
私は、一也くんの机の前に椅子を持ってきて、一也くんの机の上に堂々とお弁当を広げた。
もぐもぐ、と唐揚げを頬張っていると、一也くんの熱い視線がお弁当に向いていた。
「(もしかして、食べたいのかな?)」
「一也くんも良かったら食べる?お味噌汁もあるけど」
そういうと一也くんの目は、みるみる輝いていった。なんか、小動物みたいで可愛い。
何も言わず、お弁当を見ながら固まる一也くんの前にお弁当を差し出して、「はい、どうぞ」と声をかけた。