照れ隠し。
「ん、うまい。前川さんすっごく美味しいよ!
これ前川さんが作ったの?めちゃくちゃ美味しいねっ!!」
口の中になかなか広がってこない肉汁に違和感を覚えて、その代わりに意気揚々と発せられる声の主へと顔を向けた。
モグモグと口を動かす青年の顔は満面の笑みで、
あたしの口に運ばれるはずの唐揚げは何故かあたしの顔を覗き込む青年の口の中にあった。
「前川さん絶対にいいお嫁さんになるよ!
だって、こんなに美味しい唐揚げが作れるんだもん」
え、あたしの唐揚げ?
「俺、唐揚げ大好きなんだ」
…なんで日野君の口の中に。
「だからね、俺唐揚げを上手に作れる人と結婚したくてさ」
それ、あたしの唐揚げ。