“俺の女”





車の中の光景に
あたしは固まってしまう



動くこともできずに
ただ今起こっていることを
見てるだけだった



車の片方のドアが開いていて
中がライトで光っているため
はっきり見えたんだ



助手席側に
外から身を受け入れる
夏美ちゃんの姿


そして運転席に
確かに座るヒロさんの姿


なんで一緒にいるの?


どうして
二人でいるの?


何を話してるの?



この状況を理解できず
見ているだけのあたし


それ以上近づくことも
できないで
その場で突っ立っていた



向こうからは
あたしが見えない
街灯もなく周りの明るさで
車の形とヒロさん達だけが
浮かびあがるこの道




「あかりさん?」



後ろから
恵太くんが来た


突っ立ってるあたしを
不思議に思ったのか
恵太くんはあたしの視線の先を見た



「あれ夏美?
てかあの男…」



はっきりと見える光景に
恵太くんも驚いていた



恵太くんもあたしの横で
一緒になって見てる


あたしは言葉も交わさず
ただ二人を見てた
夏美ちゃんが少し笑うたび
胸が痛む


なんで‥?


なんで一緒に…‥‥



それしか浮かばない

だって夏美ちゃんと
ヒロさんは知り合いじゃないはず


二人で何をしてるの?



あたしがいない所で
なんで女の人と会ってんの?



自然と涙腺が緩む


恵太くんはそんなあたしを
見つめてた




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