“俺の女”
あたしはその場に
立ち尽くし
遠くなる車を見つめた
ヒロさん‥
あたしを迎えに来て
くれたんじゃないの?
あたしが見つからなかったから
帰っちゃったのかな
だったら‥
あたしは急いで携帯を出し
ヒロさんに電話をした
「もしもし?」
<はい?>
「あ‥えっと
あたしいるよ?」
<‥え? なんの話?
わりぃ今仕事中だから
切るぞ?>
「え…‥」
嘘だ―‥
ヒロさん嘘ついてる‥
<あかり…?
何かあった?>
「え?! あ…いや何もないよ」
<…そっか…
まぁまた連絡するから>
「うん分かった‥」
ヒロさんが嘘をついてるのを
あたしが誤魔化したくて
何も言わなかった
だって嫌だもん
嘘つくなんて
信じたくない
そう思っても
電話を切った携帯を
力強く握りしめてる
自分がいたんだ
涙を我慢して
その場にしゃがみこむ
あたしがいたんだ―‥
しばらく
その状態でいると
ホームから音楽とアナウンスが
聞こえてきた
電車がくる
行かなきゃ
意識が朦朧(モウロウ)とする中
ホームまで下り
着いた電車に乗った
"仕事中だから切るぞ?"
どうして‥
仕事って
こんなとこまで来るの?
そんなのないよ
ヒロさんはあたしに
嘘をついたんだ
でもどうして‥?
なんで駅にいたのか
なんのためにあたしに
嘘をついたのか
分からない…
だから不安になるの