“俺の女”




「ありがとね‥」



あたしは恵太くんの言葉に
癖のお礼で返した



だけど"ありがとう"って
すごく良い言葉だと思う



素直に出せない言葉でも
"ありがとう"の一言が
全てを受け入れてくれるから



恵太くんは
笑顔であたしを見て
他には何も言ってこなかった




「じゃあ戻るね」


「はいはーい」



先に休憩が終わったあたしは
仕事に戻った



本当に辛いバイトは
残業2時間まで及んだ



忙し過ぎてヒロさんに
連絡できなかったのに
待っててくれた


バイトの日は毎日
送迎してくれる


残業しながら
今日は一人で帰宅だと思ってた
さすがに連絡なしで
2時間も待ってないだろうと‥



だけどヒロさんは
待っててくれた
心配した顔つきで
あたしを迎えてくれたんだ


「なに‥残業?」


「うん。ごめんね連絡できなくて‥
もういないと思ってた」


「何があったか
分からねぇのに
帰るかよ」


「‥ありがとう」



幸せ。



こんな素敵な彼氏がいて
あたしは幸せ者だよ



あんな小さな悩みなんて
消えてしまえばいいのに



あたしは本気で思ったんだ

この幸せを
手放したくないって―‥






< 247 / 421 >

この作品をシェア

pagetop