“俺の女”




「あれ…美紀さんたちは?」


今はヒロさん一人だけ



家族は…いなかった



「ん?あぁ先に行った。
俺だけ後にした」



そーなんだ‥


でも


「なんで?」


「‥別に‥意味はない」


「‥‥?」



ま、いっか


こうして二人になれたんだし



それから新幹線の時間までの間
少しだったけど話をした



お婆ちゃんの病気のこと
美紀さんの新しい大学のこと
ヒロさんの一人暮らしのこと
アパートのこと
新しい勤務先のこと



短い間にこれでもかってくらい
たくさんの話をした


ついでにあたしのことも
必要ないくらい話した



次会う時は
今話したことがお互いに
慣れている事だと思うから初々しい気持ちで
話したかったんだ
"こんなことがあった"
じゃなくて
"こんなことをするの"を
伝えたかった



だったら
離れても少しは
状況が分かるでしょ?


これがここに来た
一つの目的でもある





とうとう時間がきてしまった



ヒロさんの小さなバッグだけ
持って一緒にホームまで向かった



『まもなく〜○○線‥』



アナウンスが流れる


それを消したい気持ちだ



もう少しいたいよ―‥





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