“俺の女”




あたしは何も言わず横に座ると
ヒロさんは話し出した



今にも消えそうな声で―




「あかりが風呂に入って
20分‥ぐらいかな
理乃から電話があった。
番号知らなかったから
出てしまって」




前に言ってたっけ


メモリはないって



「すぐ切ろうと思ったけど
様子がおかしくてさ‥
"今から死ぬ"って
"今から手首切るから"って。
‥正直そこから
覚えてねぇ―」




叫んで


家を飛び出して


理乃さんの所まで
駆け寄ったのは
ヒロさんの心の内の表れ



覚えてないほど
混乱してたってことは




それは…



「けど… 分かんないけど
ほっとけなかったんだ。」





理乃さんに対する気持ちが1%でも
ヒロさんの中にあったということ




これは"情"じゃない



こういう時って
誰もが慌てて混乱すると思う



なんで?って
助けなきゃ、って
脳が使命すると思う




でもヒロさんは


"怒り"があり


その中に"守る"が



あったんだ





責任を感じたんじゃない


ただ




あたしを忘れてまで

走っていたってこと




ヒロさん?



もう気付いてるでしょ?






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