“俺の女”






一人の医者が走るあたしたちの前に
やってきた




「終わったんですか?
理乃は…」



か細い声で緊張気味なヒロさんの声



「大丈夫ですよ。
命に別状はありません。
このまま一週間ほど
入院していただければ
すぐ回復しますから」



「そうですか。
ありがとうございました。
…よかったぁ」




命に別状はない


一週間で回復するんだね



よかったよ




先生の笑顔を見て
ヒロさんは力が抜けたのか
その場に座り込んだ



「ヒロさん?!大丈夫?」


「…‥った」


「え?」


「まじで良かった…」







ヒロさんの涙



綺麗で透かしている



流れるまでなく
目に溜まる涙は
ヒロさん、そのものだった




初めて見たヒロさんの涙を
あたしはそっと拭ってあげたんだ




「よかったね。理乃さん
何もなくて良かったね」





ヒロさん?



その涙を忘れないように
その気持ちを忘れないように




理乃さんへ届けるんだよ








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