“俺の女”
看護婦さんの
一番大切なものを
この人は持っていた
だけどね看護婦さん
あたしの顔色は
きっとスッキリしてないはず
自分でも分かるんだ
重たい瞼に渇れた唇
頬は色を無くしていると思う
そんなあたしの顔色は
決してスッキリしてるとは
いえないよ
優しさをありがとう看護婦さん
なんだか本当に安心してる
不思議だよね
近くなっていく
理乃さんの病室
"笑顔見せてあげて下さいね"
【磯山理乃】
そう書かれたネーム板を見て
力いっぱいに拳を握る
大丈夫 大丈夫 大丈夫‥
ゆっくり拳を広げ
ドアの取手に手が触れた時
「ごめんなさい」
ドアの向こうから
理乃さんの声が聞こえた
手が止まり
意識は声に集中する
「分かったから。
二度とすんなよ」
「うん‥ あのねヒロ
あたしさぁ初めて
ヒロに対して"後悔"を
知ったの。」
「後悔?」
「中途半端にヒロと
付き合っていた頃を
今更 後悔したの。
あんなに、あかりちゃんを
愛してるヒロを見て
あたしにも同じ愛が
欲しいって‥」