“俺の女”
緩んでいたはずの頬が
だんだん固まってきて
目に熱いものを感じた
あの日
礼と遊ばなかったら
駅に行かなかったら
ヒロさんに会えてなかった。
ヒロさんに見てもらえなかったら
礼に押されなかったら
ヒロさんと付き合ってなかった。
この一枚の写真が
この輝いている夜景が
すべてを思い出してしまう
「なんで‥泣いてんだよ」
知らない
分かんないよ‥
ヒロさんがくれたもの
全部なくなったはずなのに
こんな場所に大切な思い出が
飾られていたなんて
正直、嬉しくて
あたしの中では
ヒロさんと見た、あの夜景が
一番の宝物だと今、気付いたの
「‥ありがとね、ヒロさん」
「え?」
「ありがとう」
「‥おい」
「じゃあ」
逃げるように扉を開け
外へ飛び出した
また‥
迷いそうになった
ヒロさんを恋しいと思った
だけど
もう戻れないの
"ありがとう"
あたしには
それしか言えない‥―