恋愛アンチテーゼ
「・・・さん」


だけど、聞き出さなきゃ・・うん、と言った手前やらなきゃ私の名が廃る・・。




「花本、サン!」




少し高めの、少年ボイスが聞こえてきた。
私はとっさに顔を上げる。


そこには、子犬のような表情をした、竹井くん。


「え、っ?」
「消しゴム。落としたでショ?」
「──あっ、ありがとう」


あまりに驚きすぎて、言葉を失いかけていたらしい。

後ろを向いて私に消しゴムを渡してくれた竹井くんは、にこりと笑った。







「あっ、待って。──ねぇ、竹井クンって好きな人いるの?」





私が直球に聞くと、竹井くんは首をかしげた後、言葉を理解して顔を真っ赤にする。
こりゃあ、女の子にからかわれるのも頷けるなあ。と思った。

「えっ、えっ、・・・俺!?・・え、えーっと」
「いや、言いたくないならいいんだよ、ちょっと話の種にさ。それだけなんだけど。」

何故か照れてる竹井くん。
どんだけピュアなんだ、アンタは。









「お、俺、好きな人は──「竹井くん、前向いてねー」あっ、はい、ッ!」









言いかけた途中で、先生に怒られてしまった。
何か悪いことしたなぁ・・・

私はこっそりと小さな声で、彼に”ごめんね”とだけ謝った。
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