またキミに逢えた日に
桜井は急に呼ばれたから、ビックリしたようで、何?と歩きよってきた。
「あのさ、メアド教えてくんね?」
あぁ、いいよ。
と桜井は言ってから、ちょっと待ってと自分のアドを書いた紙を渡してくれた。
「Thank you!」
と返して、桜井はあぁ、といい自分の席に戻った。
結構無口なんだな。
他の男子と居るときはちゃけてるけど。
それにしても、真優はあいつのどこがいいんだろう?
顔か?
よくわからん。
そういえば、真優の元彼と桜井仲良かったよな。
確か真優とその元彼は自然消滅だったっけな。
それであれか、桜井使って聞いてるうちに好きになったのかな?
まさか真優に好きな人ができるとは…。
意外や意外。
桜井って確か、結構モテるって聞いたことがある。
でも、驚異のナルシストってのも聞いたことがあるけど…。
ますます謎だ。
交換したことを真優に伝えたら。
真優は…。
「まぢ!ありがと!!さすが柚唯だね。勇気あるなぁ」
そうかな。
と返して、うちは自分の席に座った。
勇気なんてない。
好きな人に自分から話しかけられないし、告白もできないし。
おまけに、諦めようとしている。
こんなの、惨めだ。
うちなんかより、アド聞こうとしてる真優の方がよっぽど勇気あるし。
うちは昔から内気で、泣き虫で、意気地なしで…。
あれは、小学校のとき…。
毎日毎日泣いてばかりいた。
「泣いてすむと思ったら大間違いだし」
よく言われた。
そんなこと思ってない。
苦しくて泣いてるんじゃない。
「親がいないからって、特別なわけじゃねーんだよ」
悔しくて泣いてるんじゃない。
言い返す勇気のない自分が、情けなくて泣いてるんだ。
うちには、お父さんもお母さんもいない。
お父さんは、うちが産まれる前にお母さんと離婚した。
お母さんは幼い頃から体が弱くて、入退院を繰り返していた。
そして、四年前の5月30日。
還らぬ人となった。
あの頃はのうちは、現実を受け止めるので精一杯だった。
毎日泣きながら帰ってくるうちを、優しくなだめてくれるお母さんはもう居ない。