神の雫
「さあ鈴蘭、涙をふいて。
まずはそれを着替えなくてはね。」
「うん、そうだね。」
鈴蘭は自分の姿を思いだした。
あのまま出てきたので、そういえばまだ自分は白無垢姿。まあ、かなり気崩れてしまっているが。あの蹴りのせいで。
「さあさあ、手伝ってあげましょうね」
菊乃に促され自室に入ると、何故かテラスのドアが空いていた。
「あれ?あたし開けっ放しだった?」
ドアに近づくと、空にぽっかりと浮かんだ見事な月が目に入った。
まるで吸い寄せられるように、鈴蘭はフラりとテラスに出た。
「みて、おばあ様!
なんてきれい…」
突然、鈴蘭の胸であの首飾りから眩いばかりの光が溢れた。
「きゃあ!」
やがてそれは鈴蘭を包む輝く球体となり、鈴蘭の体が宙にういた。
「きゃああ!鈴蘭!鈴蘭!」
菊乃が必死の形相で鈴蘭を掴まえようと手を伸ばしている。
鈴蘭も、その手を掴もうと手を伸ばしたいのに、体がなぜかいうことをきかない。
そのとき、ひときわ眩い光を放つと、青く輝く球体は空高くへと登り始め、その速度を増してゆく。
「いやぁあ、鈴蘭!」
菊乃が泣いている。
泣かないで、おばあ様、泣かないで…
鈴蘭は自分の意識が遠退いていくのを感じた。