神の雫
「鈴蘭(リラン)様、お心はお決まりですか?」
遠慮がちにかけられたその声に、少女は精一杯の笑顔をむけた。
「当たり前でしょ、小峯。
この観ノ宮家のため、大好きなおばあ様のため、あたしに出来ることをするだけよ。」
小峯と呼ばれた初老の紳士は、悲しげに視線を下げた。
「…しかし、このようなこと、菊乃様も亡くなられたご両親も、望んではおられないのでは」
「小峯!」
小峯がはっと顔を上げると、少女は 一瞬悲しげな表情を浮かべたが、再びその顔に笑顔を張り付けた。
「もう決めたの。
…あたし、綾小路さんと結婚するよ。」