神の雫



「きれいな石…」

「うふふ、そうでしょう。
でもね、これが何の石かはわからないの。」

「え??」

家宝というからには、なにか貴重な宝石なんじゃないの?

鈴蘭の顔にそう書いてあったのだろう、
菊乃はまた可愛くうふふ、と笑った。

「これは我が家の当主が代々受け継いできたけれど、これがなんなのか、どういうものなのかはわからない。
ただ、『その血絶えるまで、この石を守るべし』との言い伝えを守り、今日まで秘かに受け継いできたものなの。」


「言い伝え…そんなの知らなかった。」

「それはそうよ。これは前当主が次の代に代わるとき、秘かに受け継いできたのだもの。

これが、貴重な宝石なのか、もしかしたら、ただの石ころなのかはわからない。
でも、先祖代々の思い、今日この日に鈴蘭に渡しておきたかったの。」


そう言うと、菊乃は丁寧に鈴蘭の綿帽子をとり、鈴蘭の細い首にその首飾りをつけた。





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