真夏の雪
一人…私は物置に向かう。

人の出入りの無いこの部屋に唯一ホコリをかぶっていないものがある。


…スケッチ。


鈴「もう少し…



画材を外に出し、風景を眺める…


鈴「…ちゃんと書けてるのかな。

もう半分以上は完成していた。

何故か完成が近づく度に筆の進みが遅くなる。


頑張らないと。

怖がってはいけない。

いつか…終わる私の世界…



それまでに証明したい…。



あの日私は後悔した。
冬夜は突然いなくなった。

私は…まだ生きている証を残すことができる。


それはとても幸せなこと…。


この絵にどれだけの思いを込められるだろう。


鈴「…そろそろ帰ろうかな…。


日は暮れかけていた。

暗くなる前にかえらなきゃ。


ユキさんにあんまり頼るわけにもいかないし…。


画材を片づけ、物置に戻しに行った。


私は学校を出て、小走りで家に帰る。

はやく帰ってお店手伝わないと。

それとユキさんに言いたい事あるし。


坂道を一気に下る。

田んぼ道…

そして商店街…


夏の潮風が私の頬をかすめた。



走って帰ったから何時もより早く家に着いた。


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