真夏の雪
最初から俺は何も知らなかったんだ。


今はただ…そばにいてやろう。




…いつもの坂道が見えてきた。

どういうわけか…
いつもより長く見える。

俺たちは坂を登る。

気分的に死刑台に登っていく感じがした。

鈴はもっとそれを感じているはずだ。


雪斗「…行けそうか?


鈴「はいっ。


鈴は元気な顔でそう答えた。

しかし…鈴がそんな態度をとる度に胸が締め付けられる。



雪斗「この坂を登るのも何度目だろ…。

ポツリと俺はつぶやく。


雪斗「鈴は毎日この坂登ってたんだよな…すげーな。
俺なんかは最初ひーひー言ってたのに…


…でも最近は鈴のおかげで体力がついた気がする。


雪斗「なんか足腰強くなった気がするぜ。ははっ。




…あれ?なんか静かだな鈴。


雪斗「…鈴、聞いてる?



鈴の足下がおぼつかなくなっている気がした。


鈴「はぁ…はぁ…。

鈴の息が荒い。



汗の量も半端ではなかった。



雪斗「鈴っ!!


気のせいじゃないぞ!
くそっ!?鈴!


鈴はふらつきながら俺の方に倒れてきた。


雪斗「大丈夫かっ!?鈴!



鈴の目は虚ろになっていた。

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