真夏の雪
いつの間にか部屋には鈴と俺しかいなかった。

医師と看護婦はもういない。


鈴のそばに寄り添って…顔を見る。


…さっきまでの面影がまるでない。


まるで死んでいるようだ。


突然背後から激しくドアを開く音が鳴り、びっくりして振り向いた。



琴音「………鈴。


琴音さんが立っていた。

ふらふらした足取りで鈴に近付く。


琴音「鈴…。ごめんね…。ごめん。


琴音さんはそれだけを繰り返し…

シーツを握り締めて鈴を覆うように泣いていた。



普段冷静な琴音さんがここまで取り乱すなんて…もう鈴は治らないのか?


俺に出来る事はただ鈴の回復を待つしか出来ないのだろうか?

…ココロに穴が開いた気分だ。

何かしてやりたいのに何もできない自分が歯痒い。



ただ…ただずっと…
立ち尽くしたまま鈴を見つめていた。




続く…
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