真夏の雪
男「だ…大丈夫ですか?

俺より若そうな男は泣きそうな顔でこっちを見ている。


雪斗「…そんな顔すんなよ。大丈夫だってっ。


男「次から気をつけます!


雪斗「いいって、行けよ。


男「すみませんでした!


そういって男は去って行った。


雪斗「…はあ。


…ん?後ろ?
俺は慌ててギターをケースから出した。
本体はひび割れ…ネックも少し曲がってる…。

雪斗「大丈夫じゃねぇ―っ!


しかし気付いた時には後の祭りだった…。


雪斗「つ…ついてねぇ…。
結構いい値段したのに…。


捨てるわけにもいかず…ケースに入れ直して、担いだ。

雪斗「ライブ中止だな…こりゃあ…。


高橋からもらった(事にしてる) はした金じゃあ新たに買うには足りね~…。


とぼとぼ歩き…沈んだ気持ちを何とかするために…

海岸沿いに歩いていった。


海がすぐそこに見える。

静かな空間にひたすらさざ波の音が鳴り響く。


飛鳥「やあ、ユキ。

その女のような男は海岸沿いの防波堤の塀の上に座っていた。


雪斗「………。
…誰だっけ?


飛鳥「柊飛鳥!忘れないでよ。


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