真夏の雪
こんな事をしたって意味が無いのは分かっていた。


理屈じゃない。気持ちだ。


佳奈「ユキ―!

遠くから声をあげたのは佳奈だ。

こっちに近付いてくる。


佳奈「はぁ…はぁ…。鈴が…倒れたって本当…!?


雪斗「ああ…、今は昏睡状態だ。


佳奈「嘘…。


雪斗「お前はお前の出来る事をすればいいと思うぜ。



佳奈「…私の…?


そう言ってその場を去った。


俺も…。



やるべき事をやるだけ。


俺は来た道を引き返し、なかよし商店街の神崎パンに向かった。


いつもの扉の音が鳴り真っ直ぐ琴音さんのところに向かう。
台所のテーブルで椅子に座りうなだれている琴音さんの前に俺は立った。


雪斗「琴音さん。


琴音「……。


雪斗「俺この町好きだ。
一つの所にとどまって…いろんな人と出会った。
みんないい人だった。
琴音さんも。
…鈴も。


琴音「…?


雪斗「だからっ…!
鈴にはこんなふうになって欲しくないから…。
みんな幸せで良い人だって教えたいから…!
歌うんだ!
病院前で2時間後…。
ちょうど17時だ。

琴音「……。


雪斗「…よかったら琴音さんも来てくれ。白い鈴を持って。
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