初恋タイムスリップ(成海side)
瀬戸先生は目を丸くしていた。
「え・・?成海くんが?
まあ・・うれしいけどね。立候補してくれたほうが。
あまり男子は参加したがらない行事だから、
びっくりしちゃった。
じゃあ・・指揮者は成海くんね。
一応、伴奏の桜木さんにも伝えておいてね」
桜木に・・
「あ・・はい。わかりました」
「じゃ」と、瀬戸先生は行ってしまった。
音楽室からぞろぞろと生徒たちが出てきて、
廊下で立ち止まっていた俺を追い抜いていった。
「成海。教室戻ろうぜ」
そう篤志に声をかけられた。
音楽室の中に目をやると、
桜木はグランドピアノにカバーをかけていた。
「俺、音楽室にまだ教科書置きっぱだから。
篤志、先・・教室戻ってろよ」
「おう。わかった。じゃあ先に行ってんな」
篤志が教室の方へ歩いていくのを見て、
桜木だけ残った音楽室に戻った。
そして、
カバーを整えている桜木に、
「ピアノ上手だね」
そう、初めて声をかけた。