初恋タイムスリップ(成海side)
それに、正直、怖かったのは、
東京への進学の気持ちが、
ぶれることだけではなかった。
今、またやり直したところで、
俺は、お母さんを失った美音を、
支える自信がなかった。
なかなか、心を開かない美音。
大丈夫としか、言わない美音の心を、
どうやって開かせるのか、
どうやって支えてあげればいいのか、
いまだにわからない。
こんな俺が、今、美音とやり直したところで、
きっと、また泣かせてしまう。
同じことの繰り返しだ。
だから、
会えない。
もし、美音に会うなら、
どんな美音もちゃんと支えられる、
強さを持った自分になってから、
会いに行きたい。
いろんなことが中途半端な今の自分では、
美音に会いたくないんだ。
「俺は絶対に、優の病院の耳鼻科医になるよ。
必ず、夢を実現させてみせる。
そして、もっと強い男になって、
自分に自信がついたら、
その時にもう一度、
美音に告白しにいくよ」
聞こえなかった蝉が、
一斉に泣き出した。