初恋タイムスリップ(成海side)
それから、優との間に溝ができた。
俺はいつしか、忙しさを理由に、家にもあまり帰らなくなった。
あの日から優とは、
話しをしていない。
優は中学から聾学校にいって、
友達を家に連れてくるようになったと、母さんからのメールで知った。
優は決して『逃げ』じゃなかったんだと、気づかされた。
そんな簡単な気持ちじゃなかった。
優にとっては、悩んで苦しんで、必死に考えて
そして自分でみつけた最善の道だったんだ。
優との間にできてしまった溝を埋めたい。
でも優に、また『正論ばかり…』と言われるのが、
怖かったんだ。
【そんな弟が大好きなんだよ】
久しぶりに言った、
『大好き』という言葉。
優が小さい頃は『お兄ちゃんは優が大好きなんだよ』と
何回も話しかけていた。
本当に優が大好きで大切だったんだ。
それがこんなに話しもしなくなるなんて、
想像もしていなかった。
【君が心を開いたからだよ】
俺は風也くんと優が重なって…
そうか。
そうか………
いつも俺は教科書に書いてあるような、正論ばかりを言って、
自分の気持ちは言わないで………
ちゃんと言えばよかったんだ。
どんな道を選んでも、大切な弟に変わりないって。
そしてその気持ちは、優が大きくなった今でも
変わらない。
優が大好きで大好きで…
大切な弟なんだ。