初恋タイムスリップ(成海side)
カチ カチ カチ カチ
医局の時計の秒針の音が
やけに大きく感じた。
この子の言うことを信じていいのだろうか。
俺はソファーに座って、少し考え込んでしまった。
女の子は、俺の前に立って、
じっと俺のことを見つめていた。
「俺はね、まだ研修医なんだ」
この女の子が幽霊なのかもしれないけど、
とりあえず、自分の気持ちを伝えようと思った。
「研修医生活が終わって、ちゃんと医師になったら、
美音に会いに行こうと思っていたんだ。
だから、まだ・・」
「これ」
女の子は、両手を差し出してきた。
その手には、白いグランドピアノの形をした
オルゴールが乗っていた。
「なんで・・これを君が?」
女の子は、ゆっくりと蓋をあけた。
すると、美音があの時に弾いた曲が、
静かな医局に流れ出した。
「私が壊してしまったの。
直しておいたから、これを美音に渡してほしい。
今日、美音の誕生日なの」