初恋タイムスリップ(成海side)
今日、美音の誕生日なのか。
ということは、
お母さんの命日…
オルゴールの音がゆっくりとなり、
そして止まった。
蓋があいたまま、音の鳴らないオルゴールを見つめた。
俺は、カリカリカリカリっとグランドピアノの裏のネジを回した。
するとまた勢いよく音が流れだし、ちょうど良いテンポのところで、
蓋を閉めた。
ほとんど休みのない研修医という仕事
新幹線と電車を乗り継いで5時間半という遠距離
美音と別れてから10年。
今までの俺には、お母さんを失った美音を、
支える自信がなかった。
【10年経っても、ずっとあなたへの気持ちは変わらないの】
お母さんの言葉を思い出し、
オルゴールを見つめた。
俺も、変わらない。
でも、変わった思いもある。
今の俺には、美音を支える自信がある。
俺はオルゴールを引き出しにしまい、
「よし!!」と気合いを入れて、
いつもの過酷な勤務についた。