初恋タイムスリップ(成海side)
その日は結局、半日で仕事は終わらず、
ぎりぎりなんとか16時台の新幹線に間に合った状態だった。
今から行くと、向こうに着くのは、
9時半過ぎか……
遅くなってしまった。
長い移動時間、心地好い電車の揺れで、俺は爆睡していた。
危うく寝過ごしてしまいそうになりながら、なんとか地元の駅に着いた。
美音の家の方向へバスに乗り、
懐かしい、美音の家の前に着いた。
見上げると相変わらずの小さな丸い街頭。
壁に挟まれた細い道を歩くと、
夢で見た大きな長方形の石が置いてあった。
「本当にあるんだ…」
なんだか不思議な感覚を覚えながら、
門まで歩き、壁についていた小さなインターホンを押した。
すると中からお父さんが出てきた。
あ……夢のまんまだ…
「はい」
お父さんは門を、ガラガラとゆっくり開けた。
俺は直角に頭を下げた。
「夜遅くにすみません。
美音さんと中学が一緒だった成海と言います。
美音さんは…いますか?」
俺が顔を上げると、お父さんは、とても優しい表情をしていた。
「そうか…
あぁ、美音はまだ仕事から帰ってきてないんだ。
今日は少し遅いな…
まぁ…もうすぐ帰ってくるだろうから、
上がって待っているかい?」
あ……
「いえ、外で待ってます」
お父さんは、フッと笑って「わかった」と言った。
そして
「じゃあ…美音が帰ってきたら、遠慮なく上がるといいよ」
と言って家の中に戻って言った。
俺は一度門を閉めて、
途中にあった石に座って、
美音を待つ事にした。