初恋タイムスリップ(成海side)



その日は結局、半日で仕事は終わらず、

ぎりぎりなんとか16時台の新幹線に間に合った状態だった。


今から行くと、向こうに着くのは、


9時半過ぎか……


遅くなってしまった。







長い移動時間、心地好い電車の揺れで、俺は爆睡していた。






危うく寝過ごしてしまいそうになりながら、なんとか地元の駅に着いた。



美音の家の方向へバスに乗り、

懐かしい、美音の家の前に着いた。



見上げると相変わらずの小さな丸い街頭。


壁に挟まれた細い道を歩くと、
夢で見た大きな長方形の石が置いてあった。


「本当にあるんだ…」


なんだか不思議な感覚を覚えながら、


門まで歩き、壁についていた小さなインターホンを押した。



すると中からお父さんが出てきた。


あ……夢のまんまだ…




「はい」

お父さんは門を、ガラガラとゆっくり開けた。


俺は直角に頭を下げた。


「夜遅くにすみません。

美音さんと中学が一緒だった成海と言います。

美音さんは…いますか?」



俺が顔を上げると、お父さんは、とても優しい表情をしていた。



「そうか…


あぁ、美音はまだ仕事から帰ってきてないんだ。

今日は少し遅いな…

まぁ…もうすぐ帰ってくるだろうから、

上がって待っているかい?」



あ……


「いえ、外で待ってます」


お父さんは、フッと笑って「わかった」と言った。


そして

「じゃあ…美音が帰ってきたら、遠慮なく上がるといいよ」

と言って家の中に戻って言った。


俺は一度門を閉めて、

途中にあった石に座って、

美音を待つ事にした。


< 123 / 143 >

この作品をシェア

pagetop