初恋タイムスリップ(成海side)
俺は、座りながらその人をじっと見た。
向こうも、こっちを見ている。
きっと、美音だ。
俺は、立ち上がった。
そして、一歩 一歩 美音に近づいた。
美音の目の前に立つと、彼女は薄手の白いコートを着ていたせいか、
街灯の明かりが反射して、とても輝いて見えた。
違う、コートのせいじゃない。
美音はこの10年で、
想像以上に、素敵な女性になっていた。
青白く血色の悪かった肌は、
きれいに化粧をされ、ほんのり色づいていた。
あいかわらず華奢ではあったけど、
それは病的なほどではなく、
かかとの高いヒールを履いている彼女は、
明らかに、大人の女性だった。
美音は、革のバッグを胸の前で抱えて、
少し、警戒しているようだった。
「美音」
ずっと、呼びたかった名前。
ずっと、胸にしまいこんだ思いが、
今、溢れ出しそうだ。