初恋タイムスリップ(成海side)
補聴器も人工内耳も外してしまったら、無音の状態だ。
耳に音の刺激を入れないと…一日数時間でも音を入れないと……
音の刺激がない状態を続けると、
次、機械をつけても…
もう、機械をつけても聞こえない耳になってしまっている可能性が高い。
「あのな…優……」
あ…また正論を優にぶつけてしまう。
機械を外している時間が長くなれば、自分の耳がどうなってしまうのか、
優もわかっているはずだ。
突然優が立ち上がって、リビングから出て行ってしまった。
また何か言われる事を察したのかもしれない。
俺は、馬鹿な兄貴だな……
優を目の前にすると、なぜか説教っぽくなってしまう。
そんな説教じみた事ではなくて、言いたかったのは…
するとまた優が戻ってきた。
優は補聴器と人工内耳をつけてきた。
「お兄ちゃんの手話、下手くそだから」
そうしれっと言ってお茶を飲んだ。
こいつ…いつの間にこんなに大人になってんだ…