初恋タイムスリップ(成海side)
優に会ったらちゃんとあの日の事を謝って、
大切なんだという気持ちを伝えると決めていたのに、
見た目も中身もぐっと大人になってしまった優に、
なんだか照れ臭い気持ちもあって、なかなか切り出せない。
「ごめん」
突然そう言ったのは、
優の方だった。
どう切り出そうか、どう謝ろうかとぐずぐず考えていた俺よりも、
優はずっと大人だった。
「お兄ちゃんに、あの日、
ひどい事を言った」
優は手話は使わずに、声で伝えてきた。
以前会った時よりも、だいぶ発音が悪くなっているように感じた。
俺は耳を傾けた。
優の一言一言をちゃんと聞きとりたいと思ったから。
「お兄ちゃんはいつも、俺のことを考えていてくれて、
どんな時も、味方でいてくれたのに、
本当にごめん。
俺……寂しかったんだ。
お兄ちゃんみたいに、味方になってくれる友達がほしかった。
友達がいなくてもさみしくなかったのは、
お兄ちゃんが遊んでくれたからだったんだって、
お兄ちゃんが東京に行ってから気づいた。
俺が泣いていると、いつも「大丈夫だよ」って言ってくれるお兄ちゃんが、
どんなに大切だったか。
俺……寂しくて……
あんな言葉を言うつもりなかったんだ。
ずっと謝りたかった。
本当にごめんなさい」
優は、机におでこがくっついてしまうぐらい、
深く頭を下げた。