初恋タイムスリップ(成海side)



優に会ったらちゃんとあの日の事を謝って、

大切なんだという気持ちを伝えると決めていたのに、

見た目も中身もぐっと大人になってしまった優に、

なんだか照れ臭い気持ちもあって、なかなか切り出せない。








「ごめん」





突然そう言ったのは、

優の方だった。


どう切り出そうか、どう謝ろうかとぐずぐず考えていた俺よりも、

優はずっと大人だった。



「お兄ちゃんに、あの日、

ひどい事を言った」


優は手話は使わずに、声で伝えてきた。

以前会った時よりも、だいぶ発音が悪くなっているように感じた。

俺は耳を傾けた。

優の一言一言をちゃんと聞きとりたいと思ったから。



「お兄ちゃんはいつも、俺のことを考えていてくれて、


どんな時も、味方でいてくれたのに、

本当にごめん。


俺……寂しかったんだ。


お兄ちゃんみたいに、味方になってくれる友達がほしかった。


友達がいなくてもさみしくなかったのは、

お兄ちゃんが遊んでくれたからだったんだって、

お兄ちゃんが東京に行ってから気づいた。


俺が泣いていると、いつも「大丈夫だよ」って言ってくれるお兄ちゃんが、

どんなに大切だったか。


俺……寂しくて……


あんな言葉を言うつもりなかったんだ。

ずっと謝りたかった。


本当にごめんなさい」

優は、机におでこがくっついてしまうぐらい、

深く頭を下げた。







< 131 / 143 >

この作品をシェア

pagetop