初恋タイムスリップ(成海side)
俺はまた優のそばで、机をトントンと叩いた。
すると、優は顔を上げた。
「優は、なにも悪くない。
謝らなくちゃいけないのは、
俺の方だ。
ごめんな。
優の気持ち、何もわかってなかった。
ごめんな。
ひとりで、よく頑張ったよな。
小学校、つらかったよな。
ごめんな。
一番つらかった時に、そばにいてやれなくて、
ごめんな。
ごめんな・・優」
優の前では、泣かないといつから決めていたんだろう。
きっと、優が生まれて、
優の耳が聞こえないとわかったその日から、
弟の前では泣かないと決めたんだ。
俺は、少し上を向いて、涙をこらえた。
トントン
今度は、優が机を叩いた。
そして、俺を指さし、自分の胸をさし、
指を広げた手を、自分の胸に2度当てた。
【お兄ちゃんは 俺の 『誇り』だ】
『誇り』
思いがけない弟の言葉に、
唇がふるえ、目の前の優の姿が歪み、
一瞬にして弟の前でなんとも情けない顔になった。
こらえきれなかった。
俺は初めて弟の前で、
情けないぐらい
泣いたんだ。