初恋タイムスリップ(成海side)




それから、お母さんに誘われるがままに、

東京に行く事になった。




『良には秘密よ。驚かせるんだから!』


と、お母さんと約束したため、成海くんには何も言わずに決めちゃったけど、

本当にいいのかな……



いつか白衣姿の成海くんを見てみたいと思ってはいたけど……



楽しみな気持ちとちょっと不安な気持ちで、優くんとお母さんと一緒に新幹線に乗り、東京へ向かった。


優くんは、何も言わずにそっと私の荷物を持ってくれたり、
さっと扉を開けて先に通してくれたり、

高校一年生とは思えないほど、色んなところに気がつく、しっかりした礼儀正しい子。

いつも穏やかな笑顔で、その笑顔は本当に成海くんによく似ている。


お母さんに対しても、優しくて、まるで恋人同士のよう。


優くんは人よりもずっと、苦しかったり辛かったり、

傷ついたり……

大変な事も多いだろうけど、

きっとその分、

人一倍相手の気持ちを考えられる

優しい心を持っている。

『優』という名前が、ぴったりの、優しい男の子だと思った。


最初、優くんの言葉がよくわからない事が多かったけど、

最近は、だいたいわかるようになってきた。



電車の中では、手話講座。


優くんに手話を教えてもらって、少しずつ覚えてきた。



指文字、数、挨拶、気持ち、

そしたら移動時間の5時間半はあっという間で、


気づくと、車窓から見えたのは、緑豊かな田舎の風景ではなく、灰色のビルだけになっていた。




< 135 / 143 >

この作品をシェア

pagetop