初恋タイムスリップ(成海side)
初めての東京。
人の多さに驚いた。通り過ぎる人がみんな芸能人なんじゃないかと思うぐらい、お洒落で綺麗な人ばかりに見えた。
こんな世界で成海くんは生活しているんだ……
駅から出ると、狭い空。
病院は駅からすぐの場所にあって、病院内に入ると、人であふれかえっていた。
「耳鼻科は3階よ」
お母さんたちの後ろについていき、
3階へ向かうと、フロアいっぱいに椅子が並んでいて、
そのほとんどが埋まっていた。
お母さんは受付にいき、私と優くんが座って待っていると、
耳鼻科の診察室から、白衣を着た女の人が出てきて、
こちらに近づいてきた。
その女性はお母さんと同年齢ぐらいで、落ち着いた雰囲気を持っている人だった。
「優くん、久しぶり。
元気だった?
耳、調子どう?」
女の人の名札を見ると、【矢島】という名前の上に【言語聴覚士】と書いてあった。
「大丈夫です」
優くんがそう答えると、その女の人は私をちらっと見た。
「あ……、俺のお姉ちゃんになる予定の人です。
お兄ちゃんの、婚約者」
優くんがそう言った瞬間、
「え!!!」とその人は両頬に手を当て、目を丸くしていた。
「成海先生、やっぱり彼女いたのね!」
へ〜〜っと、なんだか微妙な反応をして、
「とりあえず診察のあと、言語室でね」
と言ってまた診察室に入って行ってしまった。
「びっくりしてたね」
優くんは、くくっと笑った。