初恋タイムスリップ(成海side)
それからお母さんたちと食材などを買い物し、
一緒に成海くんの部屋に行った。
成海くんの部屋は、病院のすぐそばにある職員住宅の一室だった。
「東京はなんだか蒸し暑いわ〜」
お母さんは部屋に入ると、冷蔵庫にさっき買った食材を入れはじめた。
「全く…飲み物しか入ってないわ、何食べてるのかしら」
お母さんはぶつぶつ文句を言いはじめた。
優くんはエアコンのリモコンを見つけてスイッチを押した。
「じゃあ美音ちゃん。
私たちは帰るわね」
え…
「もう、帰っちゃうんですか?」
お母さんは優くんを引っ張った。
「新幹線間に合わないからね。
じゃあ…またね」
はいはいと言いながら、お母さんは優くんの背中を押しながら、地元に帰っていってしまった。
一人で………なんだか不安。
私は部屋をぐるっと見回した。
落ち着いた濃いブラウンのフローリングに
ロ−テ−ブルと二人掛けのソファーとテレビ。
奥の部屋には、床と同じ色のパソコンデスクに、大きな本棚に難しそうな本がびっしり並んでいて、
入りきらなくて床にも本がたくさん積まれていた。
そしてグレーのカバーのベッド。
綺麗な部屋だったけど、とにかく、本が多いと思った。
キッチンはほとんど使われていない感じで、小さな冷蔵庫。
洗面所には洗濯機、奥にお風呂。
夜中まで、何して待っていようか……
とりあえず一冊本を持って、ソファーに腰掛けた。