初恋タイムスリップ(成海side)
「あの・・・私・・
成海先輩が、好きです」
俺の答えを聞く前に、小さい女子が告ってきた。
「もし、付きあって・・」
「ごめん」
俺は、その子の言葉を遮るように謝った。
「好きな人が、いるんですか?」
俺は、今まで何人か告白されたことがあったけど、
こんなに断る言葉に悩んだ事が、初めてだった。
『別に』
『恋愛とか、興味ないから』
一言で終わり。
そんな断り方ばかりしてきた。
でも今、その断る言葉の前に、
浮かんでくるんだ。
どう断ろうかと、言葉を考えるたびに、
桜木の顔が、
桜木のピアノを弾く姿が、
真っ赤な顔で、俺を見上げた桜木の顔が・・・
どうしても浮かんできて、消えないんだ。
俺は
俺は桜木が…
そうか。
そして
今日、俺は初めての断り方をした。
「気になる子が、いるんだ。
だから、ごめん」
俺は、肩のバッグをかけ直して、
その場に二人を残し、音楽室へと急いだ。