初恋タイムスリップ(成海side)


退院の日、

お父さんと一緒に東京へ向かった。

お父さんの大学病院よりも少し小さかったけど、

周りがビルだらけで、都会の病院って感じがした。


優が入院した小児病棟には、大人しか入れないから、

俺は、小児病棟の入口のエレベーターホールのソファーで、

ひとりで座って待っていた。


ずっと、扉が開くのを

ドキドキしながら待っていた。


すると、扉が開き、お父さんとお母さんに

手を繋がれた、いつもの優が出てきた。

優は、テッテッテッテと走ってきて、

「ああー」っと抱きついてきた。

俺は、優をぐるっと回転させて、

優の頭をじろじろと見た。

髪の毛は、耳の周りを少しだけ短く切っただけで、

耳の後ろの筋にそって、細いテーピングが貼ってあるだけだった。



「あれ?頭は?髪は?包帯は?


傷・・これだけ???」




パソコンでみた画像の痛々しさと、目の前の優の元気な姿との差が、

あまりにも激しすぎた。


その時、大きな体に白衣をまとった男の人が、


優しい笑顔で俺の顔を覗き込んだ。


「小さい傷口で手術するのが、僕は得意なんだよ」


そして、大きな手の平で、

俺の頭を撫でてくれたんだ。


すっ・・すっげぇ・・・・






それから、2ヶ月後、優は初めて

『でんた(電車)』って言葉を発したんだ。




手術の傷跡は、耳の裏の筋でほとんどわからないぐらい

綺麗だった。






この時思った。



俺もあの先生みたいになりたいって。


そして誓ったんだ、




【あの先生のいる大学病院で耳鼻科医になる】





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