初恋タイムスリップ(成海side)




「えっと・・じゃあ・・」


しばらく考え込んでいた桜木が、

ゆっくりと、ピアノを弾き始めた。



ゆったりとした、優しい、

心が癒されるような、



そんな曲だった。



あれ・・この曲を弾いている時は、

優しい表情をしている。


いつも、真剣な顔で弾いているのに。



この曲はきっと、好きなんだろうな・・


うれしそうな、楽しそうな・・



俺は、この曲を絶対に忘れない。


そう、思いながら聞いていた。


弾き終えると、また静かな音楽室に戻った。




「優しい曲だね」


そう言うと、桜木はまた、

下を向いてしまった。



恥ずかしいのか、俺が嫌なのか、


どっちかな・・



俺は、ピアノから腕を下ろした。



グラウンドを見ると、

ダッシュが始まってしまっていた。


「あ・・ありがとね。また聴かせてよ。


じゃあ・・俺、部活行くから」


そう言って、バッグを肩にかけて、

音楽室を後にした。




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