初恋タイムスリップ(成海side)
それから篤志と別れ、
家へとひとりで歩いた。
「ただいま」
玄関に入り、リビングのドアをあけると、
弟の優が、プラレールで遊んでいた。
優は幼稚園の年中。
「あ・・良。おかえり」
カウンターの向こうで、母さんが料理をしながら、
言ってきた。
「母さん?」
母さんの目は、まるで泣いた後のように、
赤かった。
俺は、キッチンの母さんに近づいた。
「大丈夫?母さん。なんかあった?」
「あ・・。うん」
「あ!おいいたん!おあえいー(お兄ちゃんおかえり)!」
その時、俺が帰ってきたことに気がついて、
優が電車のおもちゃを持って、こっちに走ってきた。
「ただいま。優」
「おいいたん。みてー。てんおつくったー(線路作った)」
「すごいね!じょうずだよ!
優。
おにいちゃんは、
おかあさんと、おはなし。
おはなしするから。
遊んでまっていて」
ゆっくり優の顔を見て話しかけた。
「あーい!!」
優はまた、おもちゃの線路のところへ行って、
電車を走らせた。
母さんは、目をこすっていた。