初恋タイムスリップ(成海side)
自分の席に着き、
窓際の桜木を見た。
教科書か?いや、違う楽譜だ。
楽譜を見ているんだ。
本当にピアノが好きなんだな・・・
俺は、机に頬杖をついて
そんな桜木を眺めていた。
その時、トントンと隣の篤志に肩を叩かれた。
「なんだよ」
「お前、桜木を見過ぎだろうが!周りにバレるぞ」
ほらっと、篤志が目配せをして、
教室の入口から前野が、俺をじっと見ていることを
教えてきた。
そして、前野が俺の席に近づいてきた。
「まさか・・桜木さんじゃないよね」
そう言った前野に
ちょっとちょっとと、篤志が間に入ってきた。
「前野、落ち着けって。桜木なわけないだろって。
なあ・・成海!違うよな!」
篤志、『桜木なわけないだろ』ってどういう意味だよ。
俺は、篤志の言葉にちょっとムッとしてしまった。
「成海くん?」
「だから、俺は自分の気持ちは本人に言う。
前野に、言うつもりはない」
前野は、ちょっと下を向いて考えていた。
「じゃあ、これだけは言って。
桜木さんじゃないって。
私、成海くんの好きな人が桜木さんだったら、
私・・・
私、納得できない。
だから、桜木さんじゃないって言って」